旅行編、ショート編。旅行編は、エロチィック・エッセイ。ショート編は、日常些事のショート・エッセイ。創作編は、短編小説。マイ・ギャラリーは、各編の自作挿絵の収録。

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ターニャ・ストーリー
                 ターニャ・ストーリー
                 
                 ターニアの子守絵
 ターニヤは、4歳です。金髪と青い目をした女の子です。お母さんと大ばあさんと、3人で暮らしています。お母さんの友達に、日本人のおじさんがいます。1年に1度、飛行機に乗って、遊びに来ます。今年は、仲の好いオルガのおばさんと娘のスーシャと、海のバンガローに行きました。

 3日間でしたが、とても楽しかったです。スーシャと私は、同い年で髪も目の色も同じです。お母さん同士は、高校からの親友です。それで、私達は、良くいっしょに遊びます。私達の今一番のお遊びは、絵の具遊びです。日本のおじさんが、12色のサインペンと絵の具を持っていました。お母さんが、おじさんに日本のサムライの絵を描いてもらいました。おじさんは、バンガローのテーブルの上で、色々、絵を描いてくれました。おじさんの絵は、とても変な絵です。

 でも、お母さんもおばさんも、目を大きくしてクスクス笑ったり、首をひねったりしています。おじさんの絵は、顔の半分しか無かったり、右と左が別々の色で塗ってあるから、みんな、おかしな顔をしています。色のついた積み木をひっくり返したような形の、ヘンテコリンな絵も、いっぱいあります。アパートのような大きなきのこの間を、鳥が何羽も飛んでいる絵もあります。
 お母さんは、私の部屋のかべに、おじさんの絵を、みんな、はってしまいました。それで、1人の時は、私も、お母さん、おばさんの真似をして、おじさんの絵を見ています。

 私は1人で、林の中へ行きました。お天気の好い日でした。林の中は、とても温かく、明るかったです。歩いて行くと、赤い大きなきのこが、ありました。青い大きなきのこも、ありました。お尻の黒いクロスズメバチが、1匹飛んでいました。ハチさんは、飛びながら、赤いきのこさんと、お話をしていました。
<こんにちは>を言うと、やさしいおばさんハチでした。<ぼくちゃんは、1人かい?>と聞くから、私は、ショート・カットの頭をなでて、<私は、女の子。遊んでよ。>と笑いかけました。おばさんハチは、<少しだけなら、遊んであげる。 >とほほえんでくれました。私は、おばさんの後を、付いて行きました。おばさんは、林の中をドンドン飛びます。私は、いっしょうけんめい走ります。でも全然、疲れません。走れば走るほど、速く走れました。遊園地のお馬さんより、もっと速く走れました。

 大きな谷がありました。でも、<エイッ>と跳ぶと、私の身体は、宙を飛び始めました。見ると、横のおばさんハチの体も、大きくなっていました。私が、おばさんのまねをして、両腕をつばさの様に動かすと、グングン、スピードがましてきました。とっても、ラクチンで、いい気持ちでした。私達は、ならんで、谷にそって、林の上の方に行きました。

 すると、赤い川と青い川が流れてしました。2本の川が、大きく曲がったところに、見たこともない、大きな大きな朝顔が、赤い川に、手を伸ばすように、緑のつたと葉を広げて、真ん中に、とても大きな、きれいな水色の花を、咲かせていました。ハチのおばさんは、<少し、休憩しましょう。まだまだ、飛ぶから、お腹いっばい、蜜を飲んでから、行きましょう。>と言って、花の中心に降りました。甘い香のよい、あたたかなミルクのような蜜でした。となりには、青と紫の斜め縞のシュークリームのような大きなツボミが、ニョキリと立ち上がっています。下の赤い川からは、お母さんが飲んでいるワインのにおいが、立ちのぼっていました。

 それから、もっと飛ぶと、赤い大きな星、黄色い輪の中に、黒い目をもった大きな浮き輪、緑、紫、青、黄、茶といった三角形が、空中にたくさん浮いている遊園地がありました。下からは、楽しい、とても愉快な音楽が、お日様の下で、流れていました。私達は、空中にとまったり、それらの間を、スピードをはやくしたり、ゆっくりとくぐり抜けたり、とても楽しい時間を過ごしました。特に、黄色の浮き輪さん達は、私達にむかって黒い大きな一つ目をグルグル回すので、とても楽しかったです。木陰では、顔を赤と黒に塗り分けて、コスチュームは、赤・青・黄・緑の派手なタキシードを着たカマキリさんが、陽気な音楽のタクトをふっていたのです。

 なおも進むと、巨大なきのこさんの国がありました。一番大きなきのこさんは、パリのエッフェル塔よりも高くて、灰色の雲をヤリのように、串刺しにしていました。たおれた様に、ななめに生えた黄色のきのこさんは、まるで何百年も生きている様な、大木に見えました。色とりどりの大きなきのこさんの間を、ピンク、オレンジ、ブルーのつばさを持った鳥さん達が、遠く近く、飛んで行きました。

 それから、海に出ました。海になだれ込む感じで、山の緑が、せまって来ました。山と山の間に、白い海岸がありました。そこから、上陸したのでしょうか? 赤いぼうしをかぶった黒い顔のモアイ像が、緑・赤・青・オレンジの服を着ています。思わず、笑ってしまうほどの、とてもユーモラスな同じかっこうで、一列になって、左右の足並みをそろえて、行進をしていました。きっと、モアイの行進曲のタクトを、振っているのは、さっきのカマキリさんの筈です。だって、みんな、可笑しな格好ですもの・・・  お日様は、だいぶ西に傾いてきました。

      さぁ、私も、お家に帰りましょう。お母さんが、帰ってくる時刻です。

            日本のおじさんは、帰る時に言いました。
<ターニヤ、オジサンノ絵ハ、トテモ下手クソダケド、寝ル時、ジ~ト、見テイルト、楽シイ夢ガ、何度デモ、見ルコトガ、デキルヨ。ダカラ、1人デモ、眠ルコトガ、デキルサ。>

 おじさんの言ったことは、本当でした。時々、おばあさん、お母さん、おばさんは、日本のおじさんの事を、思い出して、楽しそうにしています。おじさんは、だまっていると、少し恐い顔でしたが、どことなく面白い人です。私は、今、お母さんから日本語を教えられています。
(07/10/1)

                     ターニヤの冒険1
                       お散歩
 ターニャは、お散歩です。もう秋です。石垣の石と石の間で、初夏に黄色の花をいっぱい咲かせた草花も、今は枯れた茎先に茶色の種を、いっぱい着けて、草だけの姿になっています。お母さんと手をつないで、石垣の坂道を歩いて行くと、広い空き地がありました。

 赤・白・ピンクのコスモスが、海風に吹かれて、お日様の光をいっぱいに浴びて、ソヨソヨと揺れていました。黄色い花の芯のミツを吸いに、チョウチョさんが、たくさん飛んでいました。ターニャは、お母さんから、おやつの小粒の乾パンを貰いました。小さな歯でかみつぶすと、手のひらに乗せて、黄色いチョウチョさんの前に、出しました。チョウチョさんが、ターニャの手のひらに止まりました。

 お母さんの白いバックの中で、電話が鳴りました。お母さんは、ご用が、できたようでした。アパートに帰ることになりました。
ターニャは、黄色のチョウチョさんに、言いました。
「近いから、また来るね。チョウチョさん、名前をおしえてよ。今度は、コップに甘いジュースを、もって来るね。待っててね。」
黄色のチョウチョさんが、言いました。
「うん、ありがとう。ボクの名前は、ジョーさ。ターニャのお家が、どこか? ボクも一緒に、ついてってあげるよ。」
お母さんと手をつないで歩くターニャの顔の前を、黄蝶がフワリ・フワリと、飛んでいます。ターニャと黄蝶は、すっかり仲良しになりました。

                   コスモスと蝶の海
 朝、お日様が上がると、黄蝶は風に乗って、ターニャの3階のアパートの窓辺に、飛んで来てくれました。幸い、空き地は、団地のすぐ隣にありました。コップとオレンジ・ジュースを持って、ターニャは、黄蝶ジョーの後を、楽しそうにスキップをして、団地のほそい道を、空き地に行きました。

 今日のお天気は、最高でした。光をいっぱいに浴びて、赤・白・ピンクと、風にそよぐコスモスの花と緑の葉は、まるで<小さな花の海>のようでした。花から花へ、フワリ、フワリと飛び交う蝶チョ達の姿は、温かなそよ風の中で、ワルツのような輝きに満ちていました。
 
 四歳児のターニャは、嬉しくてたまりません。小さな手をたたいたり、色とりどりの蝶チョに囲まれて、ジャンプをしたりして、そのワルツの中で、盛んに、はしゃいでいます。疲れました。

 ターニャは、座ってオレンジ・ジュースを飲みました。紙コップを二つ持って来ましたから、もう一つのコップにも、ジュースを注ぎました。甘い匂いをかぎつけて、色とりどり、大小の蝶チョさんが、たくさん集まって来ました。皆、おいしそうに羽をふるわせて、黒いらせんの管をジュースに伸ばしています。ジュースのついたターニャの手のひらにも、何匹かの蝶チョさんが、とまって、甘いジュースをなめていました。
「ワ~イ、ワ~イ、くすぐったいよ!! これで、みんな、お友達だよ~」
ターニャは、一人でしたが、ちっとも淋しくありません。楽しい、気持ちのよい時間でした。

               おじさんの変テコリンな絵
 今日は、朝から雨でした。ベランダのお母さんが座る椅子の上に乗って、ジーと外を見ているターニャです。お天気が、悪すぎました。きっと、蝶チョさん達も、雨をさけて、みんな寄りそって、静かにしていることでしょう。お母さんは、本を読んでいます。
 
 日本のおじさんから、また変テコリンな絵が、送られて来ました。
①、ムラサキのポットと水色のコップ、赤いえのスプーン。宙に浮いた黄色のお皿には、黒い帽子をかぶった男の人が一人、足を組んで、すわっています。ポットとスプーンの間には、ピンクの服を着た金髪の女の子が、両手をあげて、黒い帽子の人に、何かを言っています。クネクネしたグリーン、オレンジ、薄い赤のベルトは、海岸のようです。
②、色とりどりの三角・丸・四角・矢印の散らばった絵は、おじさんが、ある時、見せてくれた<万華鏡>の世界のような絵です。
③、とってもカラフルで派手なバックの絵が、あります。バックの中には、Tシャツ、サンダル、日本のゲタ、時計、サングラス、ブラジャー、パンツ、タバコ、電話・・・ 色んな物が、バラバラに入っている、とても楽しい絵です。
④、お日様いっぱいの南の島の絵も、あります。サンゴの海に、小さな船が、1、2、3そうあって、人が釣をしたり、泳いでいます。海の色が、見たこともない明るい色いろで、かいてあります。お空には、白いシュークリームみたいな白い雲が、2つ並んでいます。
⑤⑥、さいごの絵は、2枚で1組の絵です。

 1枚はゲームのような、地図みたいな絵です。海の中に、手のひらがあって、赤い星、青い三角、緑の丸の形をした物が、一つづつ乗っています。地図には、それらの形をした印があって、矢印、・・・で結ばれています。手の横には、茶と白の横じまの入った魔法使いが、持っているツエが1本と、ボートみたいな物が、少しだけかいてあります。
もう1枚は、とっても恐いかんじの絵です。絵の真ん中には、頭を矢印にした大きなカタツムリのような変テコリンな物が、かいてあります。黄緑の貝がらには、らせんの矢印、ヒュ~と伸びた矢印が、黄色とむらさきの色で、塗られています。カタツムリの左には、大きな一つ目が、ギョロリと青い目で、みています。その下には、くもの巣が、かいてあります。2枚の絵の右すみには、明るい色をつかった、中途半端な半円形が、かいてあります。両方をあわせると、形になります。

「お母さん、これ、ナァ~ニ?」と聞いても、お母さんは、腕を組んだまま、むずかしい顔をするだけで、「フ~ン、サッパリ分からない。あの人、クレィジ~」と言いました。
ターニャが、口に手をあてて、日本語で「アブナイ、アブナイ、キケン。クレィジー。」と、小声で、お母さんに、言いました。お母さんは、クスクス笑って、「ダー、ダー。」と、ターニャに答えて、その頭をやさしくなでて、「内緒よ!」と、口に指を立てて、言いました。お母さんは、ターニャの部屋に、おじさんの絵をセロテープで、ペタンと、はってくれました。

 ターニャは、ねる時に、おじさんの言葉をおもいだして、その絵を見ながら、お母さんの子守歌をきいて、ねます。今夜は、どんな夢をみるか、楽しみです。

                   空を走るボート
 コスモスと蝶チョさんの海が、いっぱいに広がっていました。黄蝶のジョー君を先頭に、ターニャは、コスモスの海を、宙に浮いて、軽やかにスキップして、進んでいます。蝶チョさん達が、ターニャのジュースの甘い匂いに、帯になって続きます。
 
 途中で、大きな大きな、壁のようなおじさんの絵が、ありました。ターニャは、手のひらから、赤い星をとりました。そうすると、絵のはしのボートが、目の前に、あらわれました。ターニャは、ボートに乗って、白い帆を立てました。白い帆は、風をいっぱいに孕んで、音もなくスーと走り出しました。弓のように膨らんだ帆は、宙を走ります。コスモスの海は、アッという間に、飛び越してしまいました。さぁ、海です。不思議なことに、白い帆のボートは、海に下りずに、そのまま、空中を走ります。蝶チョさん達は、ボートを追って、高度を高くしました。ボートには、黒パンもハム・ソーセージ、チーズにヨーグルト・ミルク、ジュースも、積んでありました。毛布もありました。

 下に、見覚えのある絵の世界が、ありました。ピンクの服をきた金髪の少女と、宙に浮いたお皿にすわる黒い帽子の少年が、見えます。ターニャは、ボートの高度を下げます。
「どうしたの、おねぇさん、わたしは、ターニャ。そこじぁ、遠くて声が、とどかないわ。このボートにお乗りなさい。連れてってあげるよ。」ターニャが、手をさしのべると、
「ありがとう、お願いするわ。」少女は、ターニャの手のひらに、トンと乗ってきました。
それを見ていた少年は、スーと、黄色の皿に乗って、ボートに遣ってきました。
少女と少年は、スエータとチャコフという兄妹でした。2人は、杖の魔法にかかって、小人にされてしまったと云うことでした。杖と魔法のコップを探さないと、もとの姿に、戻れないと言います。皆と探しに行くことになりました。

 ターニャには、自信がありました。だって、その杖もコップも、おじさんの絵に描いてあったものです。絵をたどれば、きっと杖もコップも手に入れることが、できます。
「ボートさん、東にむかって、全速力!!」ターニャは、ボートに立って、東を指さしました。
ボートは、高度をグングン高めて行きます。風景は、ドンドン小さくなります。そして、その分、風景は、丸みをおびてきます。視界がひらけて、地図をみている感じです。ボートは、高度をたもつと、一気にスピードを加速させて行きます。みんな、毛布にくるまって、息をひそめて必死です。ボートの下では、黄色・緑・青・黒・赤といった訳の分からない風景が、色のしじまとなって、ゴォーと流れさってゆくばかりでした。蝶チョさん達は、ボートの底にかたまって、ピクリとも動きません。ターニャも、必死に目をつむって、動けません。でも、ターニャの頭の中には、別の世界が、広がっていました。色んな形・色んな色が、さくれつする万華鏡の世界が、広がっていました。

 気が付くと、ボートのスピードは、緩やかになっていました。毛布の中は、ひどく暑くなってきました。毛布をはねのけると、そこには、南洋のヤシの緑に、おおわれた島が見えます。小さな手こぎの舟が、1、2、3そうです。島のまわりは、白いビーチです。サンゴの海は、深さのちがいで、グリーン・エメラルドのしじまを、お日様にキラキラ輝いています。シュノーケルをつけた人が、漁をしています。
「おじさん、お魚とれますか?」ターニャが声をかけると、
「おぅ、可愛いお嬢ちゃん、どこへ行くんだい? ほら、これを、あげるよ。」
全身黒光するおじさんが、真っ白な歯で笑っています。そして、取ったばかりのロブスターを、ナイフで料理してくれました。ボートには、ショウユもワサビも、ありました。さっそく、みんなで、日本のおさしみを食べました。大人の味でした。お皿に、ジュースを満たして、蝶チョさん達の食事です。黒パンにソーセージ、ミルクで、おなかは、満腹です。ボートは、海面の上を、スルスル進みます。毛布をテントかわりにして、日陰でみんな、お昼ねのお時間です。

                怪物の出現
 ドォーンと、強い衝撃で、みんな、飛び起きました。
 あの恐ろしい絵が、山のように、そびえ立っています。不気味な一つ目が、ボートを見下ろしています。巨大なカタツムリが、天に青い矢印の頭を、グゥーと伸ばしています。貝殻のらせんは、きっとカタツムリの恐い消化器官でしょう。あんなのに飲み込まれて、貝殻のなかで、グチャグチャにとかされたら、ひとたまりもありません。

               さぁ、どうする、どうしょう!!
 
 カタツムリは、後ろ向きです。まだ気付いていないでしょう。でも、一つ目が、ボートを見ています。時間がありません!! ターニャは、必死に、かんがえます。・・・・
そうだわ、あの明るい輪の中に、逃げましょう!!
「ボートさん、全速力で、あの輪の中へ!!」

 ボートは、引き下がって、高度を上げます。一つ目が、カァ~と目を見開きます。動き始めます。絵から抜け出ようとして、厚いかべを、ブルンブルンと、ふるわせています。下のクモの巣も、起きたようです。ブルブルと、水色の大きなクモの巣の網を、こきざみに震わせはじめました。

 ボートは、輪の中心の赤の高さに、達しました。力をためて、一気に中心の赤を、突き破らねばなりません。ボートには、まだ、そのスピードのエネルギーが、足りません。スピード不足で、弾き飛ばされようものなら、一巻の終わりです。ボートは、絵からの距離200mで、中央突破の瞬間をまちます。

 目が絵から、抜け出しました。中間100mの距離をおいて、ボートの見下ろす上空に、とまります。眼球には、血走った血管のすじが、何本も、もえたぎっています。ちらりと一つ目が、クモの巣を見ます。一つ目の魂胆は、クモの巣の大きな網で、ボートごと、一網打尽にからめ取る作戦でしょう。巣の中心が、絵から抜け出ようとしていました。網は四つの輪から、なっています。二番目、三番目の輪が、抜け出しました。抜け出た輪が、力を合わせて、最後の大きな輪を、引き抜こうとしています。輪はうなって、壁は、大きくきしんでいます。

「ボートさん、落ち着いて、一発勝負よ!! もっと、風を吸い込んで!!」
最後の輪が、抜けました。クモの巣の網は、大きく息を吸い込むと、空いっぱいに、広がって、一つ目の横につきました。準備ができたとでも言うように、クモの巣を、ハタハタと鳴らして、一つ目の命令を、待っています。後ろの巨大なカタツムリが、あのネバネバする足を動かして、向きを、変えようとしています。

「さぁ、中央突破よ!! みんな、つかまって!!」
風をためこんで、はちきれそうにパンパンに、膨れあがった白い帆は、ターニャの号令を待って、もう、ブルンブルンと発射の態勢です。クモの巣が、縮まって、ボート目掛けて襲いかかります。

                「発射!!」

 ターニャが、帆のひもを、力いっぱい引きます。
グオォー、と凄まじい音を立てて、圧縮された空気が、噴出されました。ボートは、矢のような勢いで、赤い輪の中心めがけて、発射されました。クモの巣の塊が、空中に飛ばされて行きます。物凄い衝撃のなかを、ボートは、ギシギシしなって、くぐり抜けます。そして、ついに、抜けました。

                 脱出成功
 眼下には、おじさんの、さっぱり、のんべりした絵の風景が、広がっていました。おだやかな海には、手のひら、杖、ボート。内陸の草原には、古代の彩色土器のコップが見えました。ターニャは、手のひらに、首に吊るした赤い星を返しました。そして、海の杖を拾い、草原のコップを拾い上げました。コップの水を、兄妹が飲むと、2人は、元の姿に戻りました。
「ありがとう、ターニャ。君は、勇気のあるお嬢ちゃんだ。」
杖を持ったお兄さんは、お礼をいいました。
「ターニャ、本当にありがとう。もう、大丈夫よ。今度は、私達が、あなた達を送ってあげます。安心して、ぐっすり眠るのが好いわ。」
 お姉さんが、ターニャを優しく、ひざに抱いてくれました。

 朝です。おネムのお母さんは、まだスヤスヤ、眠っています。ターニャは、寝室の壁の絵を見て、1枚1枚、頷きながら、ほほえんでいます。ターニャは、ベランダの窓を開けました。黄蝶のジョーが、風に乗って、ターニャを誘いに来ました。
ターニャは、言いました。
「きのうは、疲れたね。みんな、元気?」

10/19

                  ターニャの冒険2
                   
                   私達の関係
 団地の広場の奥に、小さな幼稚園があります。幼稚園生の多くは、団地の子供達です。ターニャも、幼稚園に入りました。これでターニャも、みんなの仲間入りです。お母さんは、従兄のおじさんの会社のお手伝いをしています。日本から中古車を買って来て、それを売る会社です。お母さんは、日本語の通訳とお客さんの市内観光のガイドなんかもします。
 今日は、お母さんの従兄のおじさんが、日本から帰って来ました。日本のおじさんのお土産の中に、日本のお酒と、私の大好きな<変テコリンな絵>が、入っていました。

 お母さんは、日本のお酒が大好きです。小さなキッチンの出窓に、おじさんの絵を立て掛けて、<オゥ、頭クレィジー、オホホ>と笑ったり、<何、コレ?>などと、首を傾げたりして、日本のお酒を、美味しそうに飲んでいます。おじさんの絵は、絵の具と色鉛筆で、とてもカラフルです。お母さんが、電話を掛けています。

<アロー、ターニャ元気? チュッ>と、オルガおばさんが、やって来ました。おばさんの方は、日本のウィスキーが大好きです。オルガおばさんは、好く喋る料理好きな、ハキハキした人です。日本語は殆ど喋れないですが、英語を話します。日本のおじさんは、ほんの少し英語が分かるみたいです。おじさんが遊びに来る時は、おばさんも遊びに来ます。おじさんもおばさんも、良く言うそうです。『お互い外国人同士だから、難しいことは分からないけど、心・気持ちは通じるものだ』と。言葉が通じない分、おじさんとおばさんは、表情とゼスチャーが、大袈裟です。だから、みんなで大笑いです。お母さん・おばさんとおじさんは、歳は親子ほど離れていますが、3人とも仲の好いお友達です。

 オルガおばさんは、絵が上手です。私のリクエストをスイスイと描いてくれます。そのおばさんが、おじさんの変テコリンな絵が、とても面白いと、目を丸くしています。私の部屋の壁は、おじさんの絵で、いっぱいです。それで、おじさんの前の絵は、私の部屋からオルガおばさんの部屋に、お引越しをします。

 おじさんの絵には、この前の『化け物カタツムリ』のいる物が、ありました。きっと、『続き絵』でしょう。<一つ目、クモの巣、空飛ぶボート、蝶チョさん、クロスズメバチさん>が、たくさん描かれています。

 ターニャは、楽しくてたまりません。ベットで、お母さんが歌ってくれる、優しい子守唄も耳に入りません。寝たふりをして、薄目の片目で、壁にはられた絵を、かわるがわる見ていました。お母さんは、お酒が回ってきたのでしょう。とうとう、眠ってしまいました。ターニャは、両目をしっかり開いて、じ~と変テコリンな絵を見ていました。

                   化け物退治
 ターニャは、夢を見ました。化け物カタツムリのお腹の中が見えます。モンスターの餌食になってしまった人達が、助けを求めています。胃液に溶かされて、半分だけになった手を、必死に伸ばしています。
<ターニャ、このモンスターを、退治してくれぇ~、これ以上、犠牲者を出すなぁ~、>
悲痛な声が、こだましていました。

 ターニャは、コスモスの海に行って、黄蝶のジョーを訪ねました。夢の話をして、「化け物カタツムリを退治して、可愛そうな人達のお墓を、作ってあげたいの。」ジョーが大きく頷いて、仲間のところに、飛んでゆきました。それから、林の黒スズメバチのおばさんの所へ行って、おばさんに話をしました。
「分かったわ。坊やじぁなかった。お嬢ちゃん、女王に頼んで、仲間を集めてくるわ。安心おし。」
おばさんは、ブーンと、大きな羽音をたてて、林の奥に飛んでゆきました。

                   さぁ、大忙しです。

 コスモスの海には、白い帆をたてたボートが、ターニャを待っていました。ボートの周りには、黄・白・赤・青・緑・黒の羽色を輝かせた蝶チョさんの大群が、待っていました。
「みなさん、ありがとう。化け物カタツムリを退治しましょう。」ターニャは、ボートに乗り込みました。「出発!!」ターニャは、舵を海に向けました。風をはらんだ白い帆が、きしみます。ボートが、宙に浮きます。グイグイと上ってゆきます。蝶の群れが、一斉に羽ばたきます。コスモスの海から、色とりどりの、色の筋が、海に長く立ち上りました。
海では、林から集まって来た黒スズメバチの大集団が、黒い塊となってブンブンと羽音を轟かせていました。
「おばさん、ありがとう。黒スズメバチさん達、よろしくお願いします。」
ボートの先頭には、黒スズメバチの軍団、ボートの脇は、蝶軍団が隊列を整えます。

      空中の先には、顔と蝶ネクタイの顔が、浮かんでいます。
     オレンジと茶で顔を、塗り分けています。おじさんの絵です。

     <ターニャには、分かりました。道案内をしてくれる筈です。>
 ターニャは、空中の遠い絵に向って、白い帆を『ア・リ・ガ・ト・ウ』と5回はためかせて、合図をしました。絵が、白い歯を見せて、うなずきました。「さぁ、出発です。」岬を出ました。なおも進みます。360度水平線です。

           さぁ、全速力で、敵地に向う時です。

 道案内の絵を先頭に、みんなホバーリングをして、出力全開の体制を整えます。ターニャも、両足を踏んばって、舵がブレない様に、両手で舵を支えます。もちろん、ロープで、腰を結んでいます。『準備完了!!』『準備完了』『準備完了!!』の合図が、ターニャに伝令されます。
『出発!!』
           放物線を描いて、軍団は青い空に消えました。

                   空中要塞
 化け物の要塞が、見えました。要塞は、三段構えです。下段には、ピサの斜塔のような建物から、光が出ていました。黄色とオレンジの強い光の中で、あの大きなクモの巣が浮き上がっています。巣の上には、やはり一つ目が浮いています。中段には、あの化け物カタツムリが、2匹います。きっと、雄・雌に違いありません。上段には、高い石垣に守られたお城が、見えます。お城から出ている眩しい光の中に、血走ったギラギラした恐い目の鬼の顔が、要塞全体をまもっています。振り絞った、何時でも射ることの出来る弓矢、血塗られた刀、槍なども見えます。下段の斜塔の根元は、砂漠の流砂か、アリ地獄のようです。

 ターニャの軍団は、要塞を飛び越して、放物線を描いて、止まりました。一つ目に見付からぬ内に、戦闘のエネルギーと、作戦を立てなければなりません。うかつに上陸したら、たちまちにして、やられてしまいます。下段に行けば、流砂、アリ地獄に飲み込まれてしまうでしょう。中段に上陸すれば、今度は、2匹です。待ち構える化け物カタツムリに、飲み込まれてしまいます。上段に切り込めば、鬼の口と、矢で串刺しにされてしまいます。ターニャの軍団は、空中軍団です。空中軍団の利点を最大に発揮するには・・・

       <ターニャの責任は、重大です。ターニャは、必死です。>

 バチバチ、一つ目の瞬きの音が、しました。一つ目が、気配を察したのです。

 ターニャ達は、化け物要塞の斜塔のサーチ・ライトの光の圏外に、待機しているのでしたが、
一つ目が、飛んできました。見付かりました。一つ目が、大きく膨らみます。それは、そうです。前回は、子供と舐めてかかって、まんまと逃げられてしまったのですから、一つ目は、『大王の面子』を、台無しにしてしまったのです。一つ目の『白目』は、怒りに燃えて、真っ赤です。子分のクモの巣が、さっそく姿をあらわしました。サーチ・ライトが、一段と大きくなって、空を照らします。黒スズメバチの軍団は、黄色い羽をブルンブルン震わせて、クモの巣を取り囲みます。クモの巣も、興奮して、レコード盤のように、網を広げます。そして、赤い帯、茶色の帯、緑の帯の帯模様を、波のようにざわめかせています。まるで、舌なめずりをしているようです。

         <両陣営とも、睨みあったまま、動きません!!>

 要塞の中段には、化け物カタツムリが、青と紫の三角頭を、城壁の外に伸ばしています。斜塔の砂の地面は、引きずり込もうと不気味な舌をベロベロさせています。上段の弓は、鎖の弦が千切れるほどに、引かれています。真っ赤な矢は、早く射ろとばかりに、小刻みに震えています。

                 戦闘開始
 道案内の蝶ネクタイから、次々と同じ形が、生まれてきます。それを見て、蝶チョ達が、180度に羽を広げ、2匹の蝶が一つの四角を作り始めます。たちまちにして、三面で覆われた通路が、完成しました。完成と同時に、ターニャのボートを囲んで、一斉にトンネルを猛スピードで、突進します。トンネルの中央には、一つ目の中心です。一気に、クモの巣を破り、一つ目の目を貫きました。蝶軍団の半数を失いました。二段目です。蜂軍団が、一斉に化け物カタツムリに、毒針で襲いかかります。のた打ち回る化け物の口から、十字架の旗を立てたターニャのボートが、突進します。ターニャは、「アーメン・アーメン」とクロスを切って、ニンニクを投げ入れてゆきます。続いて、もう一匹の化け物カタツムリです。空中では、道案内の顔さんと鬼の顔が、向かい合って、口・目から炎を噴出して、戦っています。道案内の顔さんは、片方の目に、矢を受けています。右の目が燃えています。化け物カタツムリが、毒針攻撃で、のた打ち回っています。中段は、潰された黒スズメバチの死骸で、一面黒ずんでいます。勝負が付いたようです。上空に生き残りの蝶兵、蜂兵が、集結し始めています。

 巨大なカタツムリが、断末魔の動きで、手当たり次第に荒れ狂っています。中段の塀も、城壁も、斜塔も粉々に、砕いています。お城から火が出て、火の帯が、鬼の顔を燃やしていました。要塞全体が、火に包まれています。火の中で、化け物カタツムリは、ピクリとも動きません。力を失った化け物の要塞は、燃えながら、ユラユラと、海に落ちてゆきました。


       海の向こうの、岬の向こうから、
        お日様が、昇ってきました。
  眩しいけど、穏やかなお日様でした。
 黄蝶のジョーと、蜂のおばさんが、お日様に、万歳をしていました。
       岬の上の雲が、ピンクと黄色に染まって、
           朝日に輝いていました。
  何も無かったかのような、明るく穏やかな、青い海と緑のスロープの岬でした。
白い帆を掛けたボートが、海に浮かんでいます。そよ風が、小さな帆に話かけているようです。
       蝶の群れは右に、        黒スズメバチの群れは左に
          それぞれ分かれて、飛んでゆきました。

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